顧客によって最適なアジャイルは違う

のだと思う。
教科書に載っていることはあくまでエッセンス。
本質部分であって、プラクティスをそのままマスターするだけでは足りない。
やはり仮説の通り、顧客によって手法は変えなければならない。それも本質を変えずにである。
本質がわからないままプラクティスをやろうとしてもうまくいかない。
無理やり教科書の通りにやれば現実から乖離するし、逆に顧客に合わせることばかりにとらわれて本質を見失えばアジャイルの求める価値から離れていく。
ではどうすればいいかというと、これはやはりパターンである。
アジャイルデザインパターン、とでも言うべきだろうか。
どういうことかというと、顧客のパターンに合わせてとるべきアプローチを決定できるのではないかと考える。
評価軸としては例えば「技術力」という指標が考えられる。
前提として企業の規模は中小規模で同じ、仕事に対する熱意も同じとしよう。
で、技術レベルを大中小と3つに分ける。


技術力がそこそこある企業は社内のエンジニアもレベルが高く、全社的にもITリテラシが高い。新しいものも取り入れてSNSもそこそこ使えるようなところ。
アパレル企業なんかに多いだろう。こういう企業は社内ネットワークも強くてたとえばスカイプ会議をしたり、遠方でもうまい具合にできるかもしれない。
クラウドを使うようなタスク管理サービスを駆使して情報を密にやりとりできるかもしれない。
まぁそこまでできる人々ならいいものを判断する能力も高いだろうから細かく説明しなくても「こういう手法をしましょう」といっても本質を理解してくれる気がする。


技術力が中ぐらいの企業はどうだろう。
基幹系、とまではいかないまでも、社内の物流やコアとなる部分にだけシステムが介在しているような企業。
とはいえわりと"運用でカバー"があるような企業。
本業が忙しくてそこまで手も頭も回らない、たとえばエンタメ系の業界なんかに多いんではないかと思う。
こういった企業は情報リテラシは高いものの、おっかなびっくりでネットワークを使っている。
いろいろやりたい、やれればカネ儲けできる、と思っている人々である。
こういった方々は理解力はあるものの頭がカタい。
おそらくいろんなコンサルにだまされて傷ついているからその防衛反応である。
技術力がそこそこだけど、うまい人にはかなわない、でも儲けるためにはそういう人達に任せるしかあに、でもそういう人たちはみんな混沌とすると去ってしまう、だからコンサルであって、残された自分たちは更に苦行を強いられることになってしまう。
だから簡単には人を信じないのである。
この方々に対していきなり社内SNSだのグループウェアだの言っても通用しない。
無理やり導入したとしても誰も使わず打ち捨てられるだけである。
おそらく、もうすでにそういうシステムの残骸が無数に存在しているに違いない。
その中でも業務に合致している、もしくはそれを使わざるを得ない人たちが無理やり使っているというのもあるかもしれない。
ぶっちゃけこういう企業でうまくやる方法があまり想像できない。
運しだい、である。カネが潤沢にあって気が緩んでいる状態のとき、ちょうどよく穴が開いた瞬間に懐柔できれば、うまくいくかもしれない。
そうでなければ、どんなアプローチをしてもダメな気がする。
運がよかった場合は、おそらく一番教科書通りにやってうまくいくパターンではあると思う。


技術力がもっともないパターン。
町の工務店のように、ほとんどを書類で済ませているような企業である。
こういった方々はわりとプライドが高く、外部の人間を寄せ付けたりしない。
自分たちのことは自分たちでできるから、あまり慣習を崩したくないのである。
こういった方々には手法がどうのと言っても通用しない。
ワークフローを変えることができないならばなにもできないのである。
そうなるとアジャイルの手法の範疇の外。
顧客の懐に入り込む営業術が必要になってくる。
逆に言えば信用を得てしまえばこっちのものである。
トヨタ生産方式」みたいなそれっぽい単語を並べれば食いつきもいいだろう。
ただ、保守的な人々だからワークフローを一気に変えることは難しい。
この場合、徐々に変更していくアプローチが必要なのだが・・・
たとえば、アジャイルラクティスに対して慣習プラクティスがあるとする。
その企業が独自に編み出したプラクティスである。
彼らはこの慣習に固しゅうするわけだ。その理由としては「現行のプラクティスは**という価値がある」である。
つまり、アジャイルの価値を慣習の価値が衝突するのである。
これを解決するのはかなり厄介である。
これもやはりアジャイルの範疇外。ザ・ゴールの対立解消図的なものを書かなければならない。
アジャイルの提供する価値はなんなのかを明確にした上で、顧客が選択している慣習の価値も明確にしなければならない。
そんなテクニックはまだアジャイルの教科書にはまだ載っていない。
顧客に対する理解、みたいな概念はあるけども、理解するだけでは足りない。のである。